"影渡り"達が苦労しているのと同じく、鬼王もIDMの防御にてこずっていた。だが彼の場合、二人のような慎重さはない。弾丸に身をさらし、力任せに突っ込んでいく。
 全身傷だらけになるが、鬼王の肉体であれば、重傷には至らない。むしろ彼にとって、百数十年ぶりの戦う痛みは心地よくさえあった。
 彼の足元では、倒れた兵達がうめいている。とりあえず、まだ死んでいない。運が良ければ生き延びるだろう。
 そんな事より、今はあの女の子孫である少年と、烈風神の新しい乗り手だ。
 鬼王は手の内に携えていた赤い石を眺めた。自分の封印を解いた、あの男女に渡されたもので、生き物を中に吸い込む魔力があるのだという。これを使えば、少年を傷つける事なく捕らえられる。
「フン」
 鼻を鳴らした。"操り師"は一度合流してから烈風神を呼び出そうと言っていたが、そんなつもりは鬼王にはない。烈風神を倒すのは自分だ。そして彼女の目の前で石ごと少年を砕いてやる。無力感と敗北感を徹底的に味わわせてやるのだ。
 陰湿な悦びを抱き、前進する鬼王の目に霊力測定室のプレートが留まった。
(……あの男の言う通りならば、子孫はこの辺りにいる事になるな)
 鬼王はドアに手をかけた。



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