「くぅぅっ!?」
いきなり横面を張られたような衝撃を受けて、"影渡り"はよろめいた。
続いて全身から力が抜けていくような……否、むりやり身体と魂を引き裂かれるような苦痛が湧きあがる。
「っ……これ……は……」
声を絞り出しながらも、"影渡り"は本能的に悟った。
これはあの広哉という名の少年がやった事だ。
何とか調子を戻そうと、"影渡り"は意識を集中する。
だが、それより先に、今度は物理的な衝撃が叩きつけられた。
「あぐっ!?」
たたらを踏んで、衝撃の来た方向を見ると、飛行ユニットと合体したタンク形態の大炎帝がいた。
大炎帝からドリルが飛ぶ。ドリルは空中を自由に飛び回り……。
「これじゃさっきと立場が逆じゃない!」
怒りに"影渡り"は吐き捨てた。
その耳へ青年の声が届く。
『今回は退きましょう。勝ち目はなくなりました』
さっきまでと違う冷めた響きだった。
思わず言い返したくなるが、青年の判断が正しい事は認めるしかない。
といっても、能力の大半が使えなくなり、攻撃にさらされている今は、逃げる事すら難しい。
いや、空間を歪ませて敵を飲み込ませる事は無理でも……。
「自分が転移するだけなら……」
分の悪い賭けであった。
術が不発となれば、次元の狭間に閉じ込められてしまう。
かつて轟地将と戦った時のように。
しかし迷っている余裕はない。
"影渡り"は一気に霊力を解放し、自分の周囲に展開した。