「あっ……」
空間が揺らぎ、そこへ溶け込むように轟地将が消えていく。
焦りと共に綾は烈風神に叫んだ。
「烈風神さん、轟地将さんが……!」
――次元の狭間を使って逃げるつもりだ。だが、下手に手を出せばこの辺り一帯が飲み込まれてしまう――
「じゃあ……っ」
――逃すしかない――
「そ、そんな……」
しかし二人のやりとりの間に、大炎帝のドリルが、轟地将を捕らえていた。
その瞬間、金属の塊であるドリルは、見えない力に捻られ、ひしゃげてつぶれる。
「………!」
綾は口元を押さえた。
無理に突っ込めば、自分達もああなる……!
いや、もしかしたら下の学校までも……。
もう大炎帝も仕掛けなかった。
見守る綾達の前で、轟地将は完全に消滅した。
「逃げられ……ちゃいましたね」
――仕方、あるまい……――
そこへ若い男性の声が聞こえてきた。
「こちらは大炎帝とパイロット、それにパイロットの弟子だ。そっちは大丈夫か?」
さっきの"影渡り"と違い、相手の姿は見えなかったが、綾は反射的に身体を隠す。
早口に、綾は答えた。
「あ……だ、大丈夫です……ありがとうございました」
「いいって、いいって。こっちも仕事だし、何より自分でやりたい事だからな」
思いのほか、軽い口調で大炎帝のパイロットは言ってきた。
「もっと話したいところだが、場所が場所だけにそうもいかないな」
つられて綾は足元を見る。
学校からはいまだに何十何百人もの生徒が顔を出し、自分達を見上げていた。
確かに、ここへ留まるわけにはいかないだろう。
「日曜日、素顔のあんたと会えるのを楽しみにしてるぜ。じゃあな」
大炎帝は合図を送るように空を一度旋回した後、彼方へ飛び去っていった。
――さあ、妾達も帰ろう――
「はい」