「湾岸基地、聞こえるか。こちら小早川巧。IDMから助っ人に来た」
 マイクから通信を送った後で、巧はモニターの映像を拡大した。
 海に倒れ伏す烈風神と"異形"の姿がある。
「ギリギリ間に合ったってところか」
――ああ――
「先輩っ、早くあのロボットを助けないと!」
 モニター隅に映る京一が叫ぶ。
 相変わらず、大げさなくらい素直で真面目なヤツだ、と巧は内心で苦笑しつつ頷いた。
「分かってるって。機体を切り離してくれ」
「はいっ!」
「大炎帝、変形だ!」
――了解!――
 飛行ユニットとつながるフックが外れ、大炎帝は逆噴射しながら降下を開始した。
 同時に変形が始まる。
 まずコの字を縦に伸ばすような形で機体が開き、その姿をグッと人型に近づけた。
 戦車時に下部だった部位が脚部、ドリルのある箇所が両肩になる。
 さらに腰部から上が百八十度回転し、宝石を胸の前面に持ってきた。
 手足がその長さを変え、バランスを整えた。
――大・炎・帝!――
 気合と同時に、頭部が肩の間からせり出した。
「大炎帝、この時代でのお披露目だ! きっちり決めようぜ!」
――了解!――
"異形"の方も、もはや抵抗できない烈風神から、大炎帝に興味の対象を変えたらしい。
 ズシンズシンと地上に上がってきた。
「行くぜっ! ドリルシュート!」
 大炎帝の操縦は、レバーやペダル、ボタンで行われる。
 だが同時に、巧の闘志が力の源となっているのだ。
 大炎帝の肩からドリルが飛び、思念の操作によって"異形"へと飛んだ。
 高速で回転する金属が、"異形"を削る。
 しかし、飛び散る岩塊は地面へ落ちる前に"異形"の身体へ戻ってしまった。
「ありゃ?」
 巧は顔をしかめた。
「なんつー卑怯かつ羨ましい能力」
「先輩、武器を送りましょうかっ!?」
 勢いに任せて飛行ユニットのコンテナを開きそうな京一に、巧は頭を振ってみせた。
「いや、いいよ。下手に弾をぶっ放すと烈風神に当たっちまうだろ? 手持ちで何とか……」
 そこへ苦しげな女性の声が届いてきた。
――大炎……帝……――
――烈風神か?――
――そうだ……ヤツの核は喉に、ある……。そこを狙う、のだ――
「アドバイス感謝っ! そういう事なら……ドリルナックル!」
 大炎帝の拳が腕に収納され、舞い戻ったドリルが手首へ装着された。
 胸の宝石が燃えあがり、その炎がドリルに移る。
「いくぜっ!」
 足元からエネルギーを解き放ち、背中のバーニアを全開にして、大炎帝は地面を滑るように"異形"へ突き進んだ。
 灼熱するドリルが繰り出され、"異形"の喉を捉える。
「ΚヰΕΦΕΕΥΤΜΟΡΧ!」
 ガリッ! ガガガガガッ!
"異形"の形を保とうとする力と、大炎帝の力がせめぎあった。
「うおりゃあああああっ!」
 最後を決めたのは巧の叫びだった。
 一気に力強さを増したドリルが"異形"の急所を撃ち抜く!
「…………!」
 貫かれた"異形"の身体が痙攣した。
 それが足からボロボロと崩れ出す。
 身体全てがただの岩に戻ると、ドリルの先には黒い球体が残された。
 それも真紅の炎に包まれて、塵に変わる。
"異形"は消滅した。
「やりましたねっ、先輩!」
 モニターの片隅では、戦った巧以上に、京一がはしゃいでいた。



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