「えぇと……私の姿、本当に外からは見えてないんですよね?」
 烈風神に乗る時、綾は一糸まとわぬ姿になる。
 一方で、彼女の視点からは、周囲の光景が360度、はっきり見える。
 まだ二度目の戦闘で、人目が気になってしまうのも無理はなかった。
――安心しろ。誰にもそなたは見えぬ。それより敵に意識を集中するのだ――
 言われて素直に綾は"異形"を見た。
 炎上する湾岸基地を背に、自分達を見上げる敵の姿は、威圧感に満ちている。
「こ、このあいだの敵より強そうですね」
――うむ。あやつの本体は小さな核に過ぎない。だが周囲に岩を集めて、自分の肉体にする能力を持っている。魔力によって硬化された岩は、半端な攻撃など難なく跳ね返す――
「じゃあどう戦えばいいんですか!?」
――一点集中でヤツの核を破壊すればいい。妾の力を使えば、核の位置を正確に見抜ける――
 烈風神の内部で、"異形"の喉元が、赤く明滅した。
「あそこが……」
――来るぞ!――
"異形"が手を挙げた。
 岩の弾丸が烈風神を襲う。
 しかし、烈風神の機動力はすばらしかった。
――何の!――
 夜闇の中でも軽やかに、全ての弾丸をかわす。
「烈風神さん、変形を!」
――承知!――
 烈風神は瞬時に闘神形態へと姿を変えた。
――烈・風・神!――
 手に飛天槍を握る。
――はあああっ!――
 気合と共に、烈風神は空から"異形"へと突進した。
"異形"は残った手からも弾丸を飛ばす。
 そちらも、烈風神は最小限の動きで回避した。
 鳥神形態から闘神形態になった事で、運動性は僅かに落ちているが、この程度の攻撃、問題はない。
 勢いを殺す事無く、飛天槍の刃は異形の喉に当たった。
 だが烈風神が優勢だったのもそこまでであった。
――くっ!――
 光の刃は"異形"に傷一つ付けていなかったのだ。
「ΧΧΖΛΕΔΤΣΞ!」
"異形"が叫び、肘までになっていた両腕を烈風神へ向ける。
 そこへ発射されたのと同じ勢いで岩が戻った。
 岩と"異形"の間には、烈風神の背中がある。
 予想外の攻撃を避けられず、烈風神は無数の打撃を受けてしまった。
――うあああっ!――
「きゃあああっ!」
 二人の悲鳴が重なる。
 地上へ落ちた烈風神を"異形"が蹴り飛ばした。
 ガシィッ!
 もろに吹き飛ばされる烈風神。
 地面を削りながら二度三度とバウンドし、黒い海へと転がり落ちた。
――くっ……――
 烈風神は立ち上がった。
 だが、力が入らない。
 その間に"異形"は、岩を片手に集中させて、巨大なハンマーへと変えた。
 よろめく烈風神にゆったりした足取りで近づくと、自分も海へ飛びこむ。
 そして無造作にハンマーを振り上げ――。
 ガシィッ!!
 一気にスピードを増した打撃を受けて、烈風神は再び海へ倒れこんだ。
"異形"はさらにハンマーを連続して打ち込んでくる。
――くっ……うぐっ! あぐっ!――
 綾のいる場所も激しく振動した。
「きゃあっ! 烈風神さん! 烈風神さぁん!」
「死」が、若い綾が今まで意識した事のない「死」というものが、はっきり形を持って、目の前に迫っていた。
 彼女はパニックに陥った。
 死ぬの!?
 私、死んじゃうの!?
 いやっ!
 まだやりたい事たくさんあるのに!
 広哉様!
 だが綾と烈風神にとどめを刺すより前に"異形"は動きを止めた。
 そして空の一点を見上げる。
 攻撃に意識を奪われていた烈風神も気付いた。
 懐かしい"気"が近づいてくる事に。
――こ、この……気配は……大炎帝か!?――



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