「来ましたね」
“破壊するもの”の内部は、言わば四つの玄室で構成されている。その一つで“操り師”と“影渡り”は並んで口元を吊り上げた。二人の前には、空を飛ぶ烈風神と大炎帝の姿を映す壁がある。
「彼らも必死でしょうね。ここで勝たなければ、日本は地獄になるのですから」
「でも勝つのはあたし達よ」
「……そうね」
 二人の背後から抑揚のない声がした。
「……この地の人間を全て消去する。それこそが私達の存在意義……」
 声の主は、結界を破った少女だった。だが、先刻と違い、無表情でこそあれ、少女の目には意志の光がある。半透明の薄布を纏っている彼女に“操り師”は尋ねた。
「力を充填するまでには、後どれぐらいかかりそうですか?」
「……この時代の単位で言うならば、あと四十分ほど……」
「なら、時間稼ぎが必要ね」
“影渡り”はいつもの通り、指の先に闇を宿した。それで魔法陣を描く。
「二体まとめて、次元の狭間に送ってやるわ」



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