「……結局、あの子は捕獲できなかったわね」
 一度は大炎帝を次元の狭間へ閉じ込めた"彼女"が嘆息する。
「分かってるだろうけど、狭間への門を作るのは、けっこう疲れるのよ。あたしにあれだけの苦労をさせたんだから、そっちもちゃんと成功させてよね」
「ははは、面目ないです」
 頭をかきながら答えたのは、牧師の服を着た若者だった。
 表面上はニコニコと温厚そうな青年だが、注意深く見れば、彼の目がまるで笑っていない事に気付くだろう。
 彼らがいるのは闇がわだかまる結界の中であった。
 正面ではモニターのように空間が切り取られ、救急車に乗せられる美保と、それにつきそう綾と広哉の姿が映っている。
「けど確かに、烈風神が昔の力を取り戻したのは、予想外だったわね。烈風神に邪魔されても大丈夫なように、一度あいつを倒したのと同じ種を送ったのに」
"彼女"はそこで言葉を切って、身体ごと後ろへ向き直った。
 そして見上げる。
 背後に立っていたのは、全長20メートル以上あるだろうか、胸に雄牛の頭を持つ巨大な金属製の像であった。
「使うしかないのかしらね? ヤツらと同じ存在を」
「どうぞ、ご自由に。今や彼はあなたのものなのですから」
 二人のやりとりに呼応するように、像は獣のような低い唸り声を上げたのだった……。



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