「くっ!」
 術を破られた反動を受けて、“影渡り”は大きくよろめいた。
「やってくれるじゃない……!」
 憎々しげに吐き捨てる彼女の額の上を、一筋の赤い血が流れる。
 それには目もやらず、正面の壁を見据えたまま、“操り師”は静かに呟いた。
「もうこの手は使えませんね」
「なら、総力戦よっ!」
 血をぬぐって叫ぶ“影渡り”に“操り師”は応じる。
「そうですね」



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