絶対に広哉を救う。
 その決意とともに、佐倉綾は烈風神へと吸い込まれた。
 衣服や髪をまとめていたリボンが光の中で溶けるように消滅し、綾は生まれたままの姿へと変わる。
――遅れてすまなかった。綾――
 彼女を包む存在の声が綾の心に届いた。
「烈風神さん! 広哉様があの人の持つ石に吸い込まれて……!」
 綾の指差す先、地上には無言で拳を握り締め、鳥神形態の烈風神を見上げる襲撃者がいる。
――あやつは鬼王!――
「やっぱりあの人も“異形”なんですか!?」
――いや、違う。鬼王はこの国に昔から住まう魔族の一人だ。凶暴で残忍な性格故に、広哉の祖先と妾で封印したのだ――
「それで烈風神さんの事を恨んで……!」
――そうらしい――
「そんな理由……でっ……!」
 綾は唇を噛んで、鬼王を睨んだ。綾が本気で怒る事などめったにない。しかし、彼女は今、鬼王に対して本気で怒っていた。
 彼は烈風神を傷つけようとし、そのため広哉を人質にしたのだ。
 綾の大切な存在を逆恨みで踏み躙っている。
 放っておけば、さらに多くの人を苦しめるだろう。
「私……負けられない……!」



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