「……ここが潜水艇S−3号の何者かに襲われたポイントです」
 作戦室の大型モニターに映された地図を指しながら、雅が居並ぶIDM高官や巧に説明する。
 地図上にはポイントを示す赤い点が出ていた。場所は千葉県の沖である。
「撃沈される直前、S−3号は搭載した霊力センサーが奇妙な波動を見付けたと連絡をしてきています。……次にこれを見てください」
 地図には二本の点線が現れた。その内の一本は赤い点の上を通っている。
「こちらが」と雅が指差したのは赤い点から逸れた方の線だった。
「ここ半月のS−3号のルートです。そして、こちらがそれ以前のルートです」
 言って、赤い点の上辺りを指す。
「あの岩型の"異形"により湾岸基地が半壊状態となったために、別の基地へ航路を変更していたのです。今回、湾岸基地が復旧されたために従来の航路へ戻したのですが、その結果、S−3号は襲撃を受けました」
 そこで雅は手を降ろし、一同を見回した。兵藤吾郎極東司令が腕組みをして問う。
「長瀬君は、岩型の"異形"がそのポイントから我々を離すために湾岸基地を襲い、今回もS−3号を沈めたというのだね」
「可能性は非常に高いと思われます」
「ふむ……」
 兵藤極東司令は雅と地図を交互に見つめた。それから巧に命じる。
「小早川一尉、直ちに大炎帝、相良二尉の両名と共にこのポイントへ飛び、探索を行うのだ」
「了解」
 元からそのために自分が呼ばれたのだと、巧は分かっている。形程度の敬礼をして、彼はヘルメットを片手に作戦室を飛び出していった。



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