その頃、烈風神は"異形"達がいるのとは別の地点の海へ意識を飛ばし、様子を探っていた。三陸海岸沖、聖海姫と"破壊する者"が眠る場所へと。
"異形"達が復活する以前から、烈風神はここを定期的に確認していた。戦いが始まってからは、毎日見回りを怠らない。
――…………――
 今の所、封印が解ける気配はなかった。
"影渡り"が蘇っている以上、ここへは間違いなく手を出してくると思ったのだが……。もっとも、ここの封印は強力だ。解除するには、敵もそれなりの犠牲を覚悟しなければならない。
――とりあえず様子を見ているのか? それとも何か別の理由があるのか――
 いずれにしても、ここへ来る度に、烈風神は罪を意識せずにはいられない。
"破壊する者"は圧倒的な存在だった。だから倒すには、聖海姫のみが己を犠牲にして使える結界しかなかったし、その判断は間違っていなかったと思っている。
 だが、理性と感情は別物だ。
(ダメです! だって、烈風神さんの友達なんでしょう!?)
 轟地将と見えた時に、綾に言われた言葉だ。
――妾は友を見殺しにして、生き長らえてきただけだ……――
 苦い想いを抱いたまま、烈風神は意識を社へと戻した。



NEXT