"異形"出現の報は、巧がいる基地にも届いていた。
「雅、大炎帝は出られるか! 湾岸基地が"異形"に襲われてる!」
 後輩の相良京一を伴ってドックへ入った巧は、足早に雅へ歩み寄った。
 対する雅の方は、非常事態にあっても、冷静な態度を崩さない。
「ええ、話は聞いています。大炎帝は出られますよ。ただし」
「ただし?」
「調整が完全ではないため、出力は標準の70パーセント程度です」
「そんな事か。んなの、ちょうどいいハンデだよ。もう司令にも話は通した。俺と京一は大炎帝で出撃するっ」
「分かりました」
「いくぜ、京一」
「はいっ、先輩っ!」
 元気の良い返事を受けつつ、巧は大炎帝へ走った。

 ……パイロットである巧を乗せた大炎帝の左右から、リフトと通路が離れる。
 続けて上のクレーンが、翼とジェット、二つのコンテナを一体化させた京一の飛行ユニットを、大炎帝に降ろした。
 大炎帝は計四対の車輪を動かして進み、前方に設置された大型リフトの上へ乗る。
 上昇を始めたリフトの先で、ドックと外部の間に張られた計五重の特殊合金製シールドが次々に開き、地上へ出た大炎帝はジェット噴射で夜の空へ発進するのであった。



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