(私……どうなっちゃうんだろう?)
 呑気な綾が憂鬱になる事など滅多にない。
 だが昨日の出来事を思い出して、彼女は落ち込みかけていた。
 その額にピトッと手が当てられる。
「え?」
「熱は……ないみたいだけど」
「ひ、広哉様!?」
 広哉が身を伸ばして、綾の熱を測っていた。
 トクン、トクン
 本気で自分を心配してくれる澄んだ目に、ジッと見つめられて、綾は胸が高鳴る。
(あ、あの時は恐かったけど……。今も恐いけど……でも……広哉様が無事なら……まあ、いいか……)
 彼女はほんの少しだけ、報われた気持ちになったのだった。



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