以前、東京に突然出現した巨大犯罪組織ギガノス。 そのギガノスの野望を食い止めるために戦った者達がいた。それがクロノカイザーを筆頭とした『CRONOS』だった。 だがCRONOSはギガノスの壊滅と共にその姿を消しており、どうしてクロノカイザーが再び現れ、BANを襲うような事をするのか分からなかった。 それに・・・・あの少女‐雪乃と目が合ったあの瞬間、麗奈には雪乃の瞳にどこか迷いが感じられたのだ。 「・・・・・・・」 「麗奈さん」 ラストガーディアンの展望室で空を見ながら沈んだ表情をしていた麗奈に涼子が話かけてきた。その腕の中にはいつものように犬福が落ち着いている。 「CRONOSの方々の事を気にしているんですね」 「はい。なんだかあの娘、迷っていた感じがして・・・・・」 今にして思えば雪乃の最初の一撃を防げたのも、彼女の剣に迷いがあったからなのだろう。 「だったら調べてみませんか。どうしてクロノカイザーが現れたのかを」 「調べると言ってもどうやって?」 「簡単ですよ。元CRONOSの人たちに聞けば良いんですよ」 「はい?」 簡単に言う涼子に思わず間抜けな返事をしてしまった麗奈。
そして律子たちが行方をくらました二人を追う一方で、麗奈、沙希、神楽、それに麗奈についてきたフェアリスの四人は謎を解くべく神崎家を訪れていた。 発端の涼子は用事があるらしくアスタル学院に残っている。 『涼子先輩は一緒に来てくれないんですか?』 『すみません。ちょっと面白いものがあるので』 『面白い物って・・・また古文書かなんかですか?』 『ええ。先日、アスタル学院の書庫に保管されていた本が見つかったのですが、中々興味深い記述が載っていたんですよ」 『興味深い記述?』 『はい。まだよく分かりませんが、その中に<勇者の詩>という言葉があったんです。沙希さんはそれだけでもう目を輝かせて何かあると断言してらっしゃいました』 『あははは・・・・・』 思わず情景を思い浮かべ苦笑する麗奈。だがそう言う涼子の目も輝いていた事に本人は気づいているのだろうか? 以前にもカイザーたち装甲神のことを書き記した古文書『勇者伝承』の解読を行った涼子の事だ。その本は彼女にとってホントに興味深いのだろう。 その時のことを思い出し、思わず笑顔を浮かべる麗奈。 「麗奈ちゃん? ついたよ」 「え?」 神楽の声にはっとなる麗奈。見ると運転席から振り返って自分の顔を見ていた。 「あ、ここが元CRONOSのメンバーがいる家なの、神楽さん?」 車から降りると麗奈たちの前には大きな門があった。 「そう。この神崎家の三人の女の子が草薙咲也という人物に協力して、CRONOSとして戦っていたのはBANの調査で分かっていたんだけど・・・・」 だが何故か草薙咲也が何者かは調べる事が出来なかったという。 「それでどうして沙希ちゃんを連れてきたんですか?」 「それは私がお答えしますです」 麗奈と神楽の会話に身を乗り出して割り込む沙希。 沙希の話ではこの神崎家もまた剣道場を有していて、神代剣道場とは何度か交流試合も行った事があると言う。沙希はその時、応援で一緒についていった事があり、神崎家の人たちとも面識があったから水先案内人を買って出たのだ。 そして沙希がインターフォンを鳴らすと、しばらくして大人しめな女の子の声が返ってきた。 『はい・・・』 「すみません。電話していた、神代家の者です」 『あ・・・しばらくお待ちください』 言われたまま門の前で待っていると、やがて門が開き、後髪をボブカットにしたの少女が内側から現れた。資料によれば彼女は次女の月乃だった。 「どうぞ。花乃も中で待ってますから」 月乃に案内され、四人は和室に通されると、そこにはセミロングの少女が座布団の上に座って待っていた。彼女がおそらく三女の花乃なのだろう。 月乃に促され、とりあえず四人も用意された座布団に座る。神楽と沙希を前に、麗奈とフェアリスが後ろに座った。 「えっと・・・・・」 「咲也さんと姉さんのことですよね」 「!?」 どう切り出せばいいのか言葉を選んでいた神楽を遮って、先に答える月乃に驚きの表情を隠せない一同。 「す、すみません。知り合いに感の鋭い人がいて、今日あたり姉さん達の事で尋ねてくる人がいるかもしれないと聞いていたもので・・・・」 「は、はあ・・・・・」 とりあえず返事をする神楽だがまだ納得はしていないらしい。勘が鋭いだけでそこまで分かるものだろうか? 「まあ、フィアって考えてもよく分からない人だからあまり気にしないほうがいいよ」 あっけらかんと言う花乃。 「・・・・そ、それでその二人はいまどこに?」 「わかりません」 「わからない?」 「はい。あ、まずは咲也さんについて説明しておいたほうがいいかもしれませんね」 そうして月乃が語りだした真実。 草薙咲也とギガノス。彼らは咲也の両親が開発した時間移動装置『時空ゲートシステム』を使って未来からやって来たのだという事。 雪乃たちはガーディオンのマスターとして選ばれたことで咲也に協力し、CRONOSとなった事。 そしてギガノスとの戦いの末に発生した『時空の歪み』を修正するべく咲也は未来へと戻った事を聞かされる。 「それでBANでも草薙咲也の正体がつかめなかった訳か・・・・」 いくら調べても情報が得られなかった理由に納得する神楽。この時代の人間ではなかったのだから当然だ。 だが月乃たちの話はまだ続いた。 「ですが数日前、咲也さんは帰って来ました」 庭のほうから物音がしたので庭に出てみると、そこには未来へと帰ったはずの咲也が傷だらけの姿で倒れていた。 咲也の手当てをしながら話を聞くと『ラストガーディアン』のDDBシステムが稼動する際に発生するエネルギーが『時空の歪み』を大きくし、このままでは『時空の歪み』に未来世界が飲み込まれ、消滅してしまう危機にある。咲也はシステムの完成を食い止めるために戻って来たのだが、突然異形の者に襲われたのだという。 そして自分ひとりの力では既にどうにもならない状況にまで事が進んでおり、咲也は「力を貸して欲しい」と頼んで来たという。 当然、月乃も花乃も協力を惜しまなかった。 だが雪乃には分かっていた。かつて自分達がCRONOSとしてそうだったように平和のために戦っているBAN。もしかしたらそのBANと戦う事になるかもしれないのだ。だとすればきっと辛い思いをすることになる。 「だからお姉ちゃんは咲也君の力になるために。そして私たちに辛い思いをさせないために、一人で咲也君と一緒に私たちの前から行方をくらましたんだ・・・・」 「・・・・・・・」 そんな事の成り行きに驚く麗奈たち。 今回の事件にそんな真実が隠されているとは思わなかった。 その時! 「曲者っ!!」 ガスッ!! ドサッ!! 一同の耳に誰かが殴り倒される激しい音と誰かの怒声が届いた。 「な、なに!?」 突然の事態に驚く麗奈たちだったが、花乃たちはいたって冷静だった。 「あ・・・またお兄ちゃんが何かやったな」 「お兄ちゃん?」 「いえ。気にしないでください。いつものことですから」 なれた様子で平然としながら立ち上がると、庭に面した障子を開ける。 「兄さん、一体なに・・・・を・・・・・・・・」 落ち着かせようと声をかけようとした月乃だったが徐々に語尾が小さくなっていった。 「お姉ちゃん、どうしたの?」 さすがに月乃の様子を変に思い、花乃と麗奈たちも立ち上がり月乃に続いていた。 「え・・・・・・!?」 そこには怒気を放出しながら仁王立ちする和服姿の青年・慎之介と、そして・・・・・・
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