第一話 ファースト・コンタクト

時は21世紀。
世間では原因不明の爆発事件が相次ぎ、人々が得体の知れない不安に慄いている中、御国守麗奈は帰宅途中に亜麻色の髪の女の子がブリキ人形のような怪人に襲われている所に遭遇。妖魔とは少し趣の異なる相手に苦戦しながらも得意の符術でブリキ人形を撃退し、女の子を助ける麗奈。だが、その少女は自分が何処から来た誰なのか、一切の記憶を失っていた。麗奈は知人である警視庁の神代詩織警部補に女の子の身元を照会すると共に、とりあえず自分の家で彼女を預かる事にする。

 

同じ頃、警視庁妖魔特別対策班の神楽悠馬刑事は直属の上司である詩織から極秘指令を受けとっていた。

女の子を引き取って3日ほど過ぎた時、1ヶ月ほど前に連続爆発事件の先駆けとなった海上学園都市『アクアワード』内にある超マンモス校・聖アスタル学院の映像を彼女が食い入るように見ているのに気が付いた麗奈は、何かしらの手がかりがあるのではと思い、女の子と共に聖アスタル学院へと赴く。

先日爆発事件があったなど今は微塵も感じさせない賑やかなキャンパス内で、麗奈は偶然にも30代前半と思しき美しい女性をそれとなく警護している神楽刑事と出会う。女性の名前は綾摩那魅といい、同学院大学部の教授をしている世界的な天才科学者だという。
神楽たちと談笑しながらも、麗奈は学院に来てからというもの女の子がひどく不安そうな表情を浮べて、何かに怯えるような仕草を見せている事が気になっていた。
そして、話が女の子の事に移ろうとしたその時……彼女の不安の原因であろうと思われる存在がついに姿を表わした。
女の子を追いかけていたブリキ人形が彼女たちの前に再び姿を見せたのである。姿形は前回と全く同じに見えたが、その大きさははるかに巨大でカイザー並みのサイズであった。
だが、さすがの麗奈もブリキ人形の姿を見た那魅の表情が微妙に変わった事までは気がつかなかった……。

彼女たちの前で未知の敵が平和なキャンパスを蹂躙しようとしていた。
無表情なブリキ人形の手から電流のような怪光線を放たれ、辺りに爆発が次々と生じると共にキャンパスを歩く人々の間から悲鳴があがる!
人形の光線が学院の建物に向けて放たれようとする刹那、女の子が突如「やめて!」と叫び、その前に立ちはだかるかのように走り出した。
麗奈は神楽と那魅に人々の避難を委ねると、女の子の後を追いながら己の装甲神・カイザーを呼び出す。
「カイザー!!!」
妖魔で無いとは言え、目の前で学院を破壊されるの黙って見ている訳にはいかない。
カイザーがその雄々しい姿を見せる一方、近くで起こった爆発に巻き込まれて地面にたたき付けられた女の子の傍に駆け寄る麗奈。
「行くぞ!!シャイニングガルーダ!」
格闘戦で相手を圧倒したカイザーが、必殺技を放ち謎の敵を粉砕する。
凄まじい爆風の中で、麗奈は半ば意識を失いながらも何かに取り付かれたように「やめて…」と繰り返し、小刻みに身体を震わせている女の子をだき抱えるようにして守る。
しかし、敵は一体では無かった。
気を抜く間もなくカイザーの後ろに先程倒した物と同じブリキ人形が亡霊のように出現。
いや、そればかりかアスタル学院上空に空間の裂け目(ワームホールのようなもの)が生じ、その中から次々とブリキ人形が吐き出されてくる。
敵の狙いがアスタル学院である事は、半ば乱れ撃ち的に怪光線を乱射してくる事だけでも明らかだった。数の上で圧倒的不利なカイザーは防戦する事で精一杯である。
「せめてドラグカイザーに合体さえ出来れば……」
しかし、今の麗奈は腕の中に意識を失いかけている女の子を抱きかかえているだけでなく、相手の数がこれほど多くては龍王合体している隙に学院が攻撃されてしまう……!!
「こんな時に恵梨さんや沙希ちゃんに連絡がつかないなんて……」
「ぐわっ!」
「カイザー!!」
ブリキ人形達の一斉攻撃を受けて、流石のカイザーも後ずさりながら立膝を突いたその時……突如辺りが暗くなったかと思うと、空を見上げる麗奈の目には何か巨大な物体が太陽の光を遮っている様子が映っていた。
「……船?」
「あー、ただ今マイクのテスト中……えーっと、麗奈さーん聞えてますか?」
「りょ!涼子先輩??」
「はーい。助けに参りましたー」「助けにって……」
麗奈が首を傾げたのとほぼ同時に、巨大な影から舞い降りた2つの影がカイザーと対峙するブリキ人形を真っ二つに切り裂いた。
「よう!お待たせ!」
カイザーの前に降り立ったのは、黄色と緑の巨大ロボ、神代沙希の装甲神・グランタイガーとグランバイソンであった。
「及ばずながら加勢に参りました。」
「カイザー!一気に行くぜ!!」
心強い加勢を得たカイザーは仲間たちと共に次々とブリキ人形を倒していくが、彼らの手を逃れた何体かの敵が上空の巨大戦艦へと向かって行くが、
「シューティングッレイ!!」
という勇ましい声と共に、9本の光の矢が一気に人形たちの身体を貫いた。
「空には僕がいる事を忘れないでほしいね。」
大空の勇者、ファリアスだ。
「やっほー麗奈ちゃーん!愛しの恵梨ちゃんが助けに来たよー」
「麗奈さーん、あたしもいますー」
巨大戦艦のスピーカーから聞こえる仲間の声。
「恵梨さん!沙希ちゃん!」
「よーし!カイザー合体して一気に勝負を決めるぜ!!」
「うむ!麗奈!」「OK!カイザー」